夕方、テレビで、なんだかすごいニュースをやっていました。
「宇宙の小惑星から、金属を採掘する計画が、本格化しています」 「ある小惑星には、推定1,000京ドル相当の金属が眠っている」
わたし、台所で味噌汁を温めながら、その音声を聞いて、
「1,000京ドル?」
って、独り言が出ました。
「京」っていう単位、子どもの頃に算数で習ったような気がする。 たしか、兆の1万倍が京、だったかな? ということは、1,000京は、もう、わたしの想像を完全に超えている数字。 日本円にすると、約**15垓円(がいえん)**になるそうです。
「垓」って、初めて聞いた単位。
しかも、その金属を、宇宙空間にある小惑星から、本気で取りに行こうとしている人たちがいるらしい。
「何それ、SFの話?」
そう思って、夕食の後、ちょっと調べてみたんです。 そしたら、これがSFどころか、すでに現実に動いている計画で、なかなか面白かったんですよ。
今日は、その「宇宙の小惑星から、金を採掘するって、本当?」を、主婦が素朴に調べてみた話を、書かせてください。 SpaceXの火星移住の話のときと、似たような感じで(笑) ニュースで気になった言葉を、主婦が調べると、こんな世界が見えてきます。
まず、小惑星って何?
恥ずかしながら、わたし、小惑星と惑星の違いも、よくわかっていませんでした。
調べたら、
- 惑星:地球とか火星とか、太陽の周りを大きく回っている、大きな天体
- 小惑星:太陽の周りを回っている、もっと小さな天体
小惑星の多くは、**火星と木星の間にある「小惑星帯」**というところに集まっているそうです。 何十万個、何百万個と存在していて、大きさは様々。 数メートルの石ころみたいなものから、直径500キロメートルを超える、ちょっとした小さな星みたいなものまで。
そして、これらの小惑星には、地球とは違う成分が含まれていることが多いそうです。 地球では希少な金属が、比較的たくさん含まれていることもある、と。
なぜ、小惑星に金やプラチナがあるのか
これも、調べていて「へえ〜」と思った話。
太陽系ができたのが、約46億年前。 そのとき、宇宙のチリやガスが集まって、惑星や小惑星ができた。
地球のような大きな惑星では、重い金属(金、プラチナ、鉄など)は、重力で中心部に沈んでいった。 だから、地表近くには、金属はあまり残っていない。 わたしたちが金鉱山で金を掘るのも、地表近くにたまたま残った、ごく薄い金属を、苦労して集める作業なんです。
一方、小惑星は小さいので、重力が弱くて、金属が中心まで沈みきっていない。 表面にも金属が豊富に残っている、と考えられている。
つまり、
「小惑星 = ほぼ金属でできた天然の鉱山」
そういう小惑星が、宇宙にたくさん浮いている、というわけ。
ここで主役、「プシケ」という小惑星
調べていて、いちばん「え、嘘でしょ?」と思ったのが、これ。
火星と木星の間にある、**「プシケ」**という小惑星。
- 直径:約226キロメートル(これ、けっこう大きい)
- 構成:鉄、ニッケル、金、プラチナ、レアアースなどで、ほぼ金属
- 推定価値:1,000京ドル(=約15垓円)
直径226キロって、東京から名古屋までくらいの大きさ。 そんなのが、ほぼ金属の塊で、宇宙に浮いている。
そして、その価値が、
1,000京ドル。
調べたんですが、
- 日本の国家予算が、年間110兆円くらい
- 世界中の経済規模(世界全体のGDP)が、約100兆ドル
- プシケの価値は、世界経済100年分以上
もう、ピンとこなさすぎて、笑うしかない数字です。 わたしの今月の食費(だいたい6万円)とは、何桁違うんだろう?
NASA、本気で行ってます
これがすごいんですが、NASAは、すでにプシケへの探査機を打ち上げ済みなんですよ。
2023年10月13日、探査機Psycheが、地球から旅立った。 そして、火星と木星の間にあるプシケに到着するのは、2029年(打ち上げから約6年かかる)。
つまり、
「あと数年で、地球から派遣された探査機が、宇宙の金属の塊に到着する」
という時代に、わたしたちは生きている。
すごい時代ですよね。 わたしが小さい頃、宇宙の話は、SFか、教科書の中の話だった。 それが、今、リアルタイムで、NASAの探査機が金属の小惑星に向かっている。
民間企業も、動いている
NASAだけじゃなくて、民間企業も、本気で動いているそうです。
調べたら、いくつかの会社が、小惑星から金属を採掘するビジネスを目指している。
- AstroForge(アストロフォージ):2030年までにプラチナの採掘を目指す。アメリカの会社。
- Deep Space Industries:ルクセンブルクと共同で、宇宙鉱山の研究中。
- Planetary Resources:Googleのエリック・シュミットさん、リチャード・ブランソンさんが支援。
「プラネタリー・リソーシズ」とか「アストロフォージ」とか、もう名前からして、SF映画のスタートアップ。 そういう会社が、本気で投資を集めて、宇宙に向かおうとしている。
日本も、地味に貢献している話
これ、調べていて、ちょっと誇らしくなった話。
小惑星から金属を採掘するためには、まず、「小惑星に行って、サンプルを持ち帰る」技術が必要。 これ、誰でも簡単にできることじゃない。 世界で初めて、小惑星に行ってサンプルを持ち帰ったのは、日本のJAXAだったんです。
- はやぶさ:2010年に小惑星イトカワからサンプル持ち帰り、世界初の快挙
- はやぶさ2:2020年に小惑星リュウグウからサンプル持ち帰り
これらの成功が、
「小惑星から物を持ち帰る、というのは、技術的に可能」
ということを、世界に示した。 だから今、アメリカの民間企業も「自分たちもできる」と、本気で動き始めた。
「はやぶさが、宇宙ゴールドラッシュの扉を開けた」
そう言うと、ちょっとカッコよすぎるかもしれないけれど、ある意味、真実です。 日本の技術が、世界の宇宙開発を動かしている。 これ、誇っていいことだと、わたしは思いました。
でも、地球に持ち帰ったら、価格暴落する?
ここで、わたしが「えっ、それ問題じゃない?」と思った話。
あるサイトに、こんなことが書いてありました。
「小惑星1個に、7,600トンのプラチナが含まれている可能性がある」 「これは、2013年の世界のプラチナ需要の45倍にあたる」
つまり、もし、宇宙からこれだけのプラチナを地球に持ち込んだら、プラチナの価格が大暴落する。 プラチナが安くなったら、宇宙から採掘してきた人たちは、利益が出ない。
自分で採掘して、自分で価値を下げる、というパラドックス。
「それ、ビジネスとして成立するの?」 わたし、これを読んで、思わず、夫に話しました。
夫の意見は、 「たぶん、宇宙で採掘した金属は、宇宙で使うんじゃない?」
なるほど、と思いました。 宇宙ステーションを作るとか、宇宙船を作るとか、宇宙でモノを作るには、宇宙にある資源を使うのが、いちばん効率がいい。 地球に持ち帰らずに、宇宙の中で循環させる。 これがたぶん、本当の未来のかたち。
主婦の現実感覚
ここまで調べて、わたしが正直に思ったこと。
「ふーん、すごいね」
そして、
「でも、わたしの今日の夕飯には、関係ないかな」
これが、いちばん正直な感想でした。
宇宙から金が降ってくる時代が来ても、わたしは、近所のスーパーで卵が10円安い日のほうが、たぶん嬉しい。 1,000京ドルの小惑星より、今月の食費の6万円が頭から離れない。 世界経済100年分の金属より、来月の電気代の支払いが気になる。
これ、たぶん、世界中の主婦が共通して感じることなんじゃないでしょうか。 遠い宇宙の話より、目の前の家計のほうが、ずっと身近。
でも、それでいいんだと思います。 壮大な夢を追う人がいるから、人類は前に進む。 目の前の現実を支える人がいるから、その壮大な夢を見ることができる。 両方、必要。
子どもたちと話したこと
夕食の後、子どもたちに、この話をしてみました。
わたし:「ねえねえ、宇宙に1,000京ドルの金属の小惑星があるんだって」 長女(小4):「せん、けい?」 長男(中2):「京って、1兆の1万倍だよ」 長女:「えええ、そんなお金あるの?」 わたし:「うちには、ないわよ。宇宙にあるの」 夫:「俺らには関係ないけどな」
夫の「俺らには関係ないけどな」、これがいちばん主婦のリアル感覚に近い夫の名言。 1,000京ドルの金より、家族の月末の家計のほうが大事。 そういう価値観で、わが家は回っています。
長女が、しばらく考えて、
「お母さん、宇宙の金を、地球の人みんなで分けたら、いくらずつになるの?」
これは、面白い質問。 ざっと計算してみました。 1,000京ドル ÷ 80億人 = 1人あたり12.5億ドル(=約1,800億円)。
「えええ、すごい!」と長女。
そう、計算上は、地球の人みんなが大富豪になれる金額。 でも、現実はそう簡単じゃない。 誰が掘って、誰が分配して、どうやって地球に持ち込んで、価値が下がったらどうするか。 人類が、まだ解決していない、いろんな問題がある。
結局、わたしの結論
スペースX火星移住の記事のときと、似たような結論になりました。
「人類は、すごい時代を生きている」 「でも、わたしの今日の暮らしは、これまでと同じく地味で大事」
宇宙ゴールドラッシュ、と言われても、わたしには関係ない。 でも、こういう壮大な計画が動いていることを知っているだけで、なんだか、毎日が少しだけ立体的になる気がする。
ニュースで気になった言葉を、ちょっとだけ調べてみる。 それで、世界が広がる。 それで、子どもたちと話のネタが増える。 それで、わが家のテーブルが、ちょっとだけ豊かになる。
それで、十分なんだと思います。
さいごに
火星と木星の間にある、金属の塊の小惑星。 そこには、地球の人類が手に入れたら、世界経済が変わるほどの価値の金属が眠っている。 それを取りに行く計画が、すでに動き出している。
そして、そんな話を、わたしはテレビで聞いて、台所で味噌汁を温めながら「へえ〜」と感心した。 夕食の後、調べて、家族と話して、「お母さん、宇宙の金を分けてもらえないかな」と長女が言った。 夫が、「俺らには関係ないけどな」と、いつもの夢のないコメントをした。 ミケ(うちの先住猫)は、わたしの足元で、夕食の匂いに、ちょっと興味を示しただけ。
これが、わが家の、ある夜の風景。 1,000京ドルとは無縁の、ごく普通の暮らし。 でも、その暮らしの上で、宇宙の壮大な計画を「面白いね」と眺める時間がある。 これ、なんだか、けっこう贅沢なことかもしれません。
それでは、もし、ニュースで「1,000京ドル」とか「15垓円」みたいな、ピンとこない数字を見かけたら、笑い飛ばしながらでも、ちょっと調べてみてください。 夕食の話のネタとして、けっこう、楽しめますよ。
