「あれ、空がきれい」
オレンジっぽい夕焼け空に、小さな白い雲が、びっしり、規則正しく並んでいる。 魚のうろこ、というより、お皿に並べた小さな貝殻みたいな、独特の模様。
「これ、うろこ雲ってやつじゃない?」
わたし、小学校の理科で習った気がする「うろこ雲」を、ぼんやり思い出しました。 たしか、秋の空の代名詞だった気がする。
でも、今は6月。 まだ梅雨も明けてない、夏が始まる前の時期。 「秋の雲が、夏の前に出るの?」
不思議に思って、家に帰ってから、ちょっと調べてみたんです。 そしたら、けっこう面白いことがわかりました。 うろこ雲が出ると、本当に雨が降るらしいということも。
今日は、その「梅雨の終わりに、うろこ雲を見て、観察してみた話」を、書かせてください。
まず、うろこ雲って何?
調べてみて、初めて知ったこと、いろいろ。
うろこ雲の**正式な名前は「巻積雲(けんせきうん)」**だそうです。 気象の分類でいうと、上空の高〜いところ、5000〜13000メートルにできる雲。
これ、高い、というか、もう飛行機が飛んでる高さよりも上なんですよ。 人間が乗る飛行機の巡航高度が、だいたい1万メートルくらい。 うろこ雲は、その高さに、氷の粒からできた雲が、規則正しく並ぶ。
そして、見た目から、いろんな呼び方があるんです。
- うろこ雲:魚のうろこに似ているから
- いわし雲:いわしの群れに見えるから
- さば雲:さばの背中の模様に似ているから
ぜんぶ同じ雲。 昔の人が、それぞれの地域で見て、自分なりに名付けたんですね。 漁師さんが名付け親じゃないか、と書いてあるサイトもあって、ちょっと面白かった。 そりゃ、漁師さんは空をよく見るから、魚に例えるよなあ、と納得。
ひつじ雲と、ちょっと似てるけど別物
ここで、「ひつじ雲」という言葉も気になって、調べました。 ひつじ雲、これも秋の雲として有名ですよね。
うろこ雲とひつじ雲、似てるけど、実は別物だそうです。
| うろこ雲 | ひつじ雲 | |
|---|---|---|
| 正式名 | 巻積雲 | 高積雲 |
| 高さ | 5000〜13000m | 2000〜7000m |
| 一つの塊 | 小さい | 大きい |
| 色 | 真っ白 | 灰色がかることも |
| 影 | できない(薄いから) | できる(厚いから) |
見分け方が、面白い方法で、
「腕をまっすぐ伸ばして、小指を立ててみる」 「雲の塊が、小指で隠れる大きさ → うろこ雲」 「小指より大きく見える → ひつじ雲」
これ、誰でもできる、シンプルで素敵な方法ですよね。 気象学者じゃなくても、空に向かって小指を立てるだけで、雲の名前がわかる。 昔の人の知恵というか、観察の工夫というか、なんだか感動しました。
わたしも、夕方見た雲を思い出して、想像で小指を立ててみた。 たぶん、隠れていた。 やっぱり、あれはうろこ雲だったみたい。
秋の季語、でも夏でも見られる
うろこ雲は、秋の季語になっているそうです。
理由は、
- 秋になると、上空の空気が澄んで、高い雲が見やすくなる
- 秋は、台風や低気圧が多く近づく時期で、うろこ雲ができやすい
つまり、秋に特に見られやすい雲だから、季語になった。 でも、年中、出るときは出るそうです。
わたしが6月の梅雨の終わりに見たのも、そういう意味では、全然不思議じゃないんですね。 低気圧や前線が近づけば、季節を問わず現れる。 たまたま、わたしの目に止まっただけ。
「えっ、秋以外にも出るんだ」と知って、ちょっと得した気分でした。 これからは、夏でも冬でも、上空を見上げる楽しみが増えた。
ここからが、本題。「うろこ雲が出ると雨」って本当?
調べていて、いちばん知りたかったのが、これ。
「うろこ雲が出ると、3日のうちに雨」 「ひつじ雲が出ると、翌日雨」
こんな言い伝えが、日本各地に残っているそうです。
これ、当たるの?
カラス記事を書いたときに学んだ通り、こういう言い伝えは、当たることも外れることもある。 でも、調べてみたら、うろこ雲の言い伝えは、かなり当たるらしいんです。
気象専門家の方の解説によると、
「比較的高い確率で当たる、と言われていて、7割くらいは当たる」
なんだそう。
7割って、けっこうな確率ですよね。 天気予報の的中率が8割強なので、それと比べても、決して見劣りしない。 昔の人の観察眼、本当にすごい。
なぜ、当たるのか?
ここからが、調べていて「へえ〜」となった部分。
うろこ雲(巻積雲)は、低気圧や前線が近づくときに、現れることが多い。 気象の科学的にも、これは確認されている事実だそうです。
そして、雨を降らせる雲(乱層雲など)は、低気圧の中心付近に集まっている。 うろこ雲は、その前触れとして、低気圧より一足先に空の高い位置に現れる。
つまり、
「うろこ雲が出る」→「低気圧が近づいている証拠」→「数日後、雨が降る可能性が高い」
という、ちゃんとした気象のメカニズムがあったんですね。
これ、わたし、感動しました。 昔の人は、気象学なんて知らなかった。 でも、毎日空を見て、雨と雲の関係を観察して、「うろこ雲が出ると、数日後に雨」というパターンを発見していた。 科学の言葉でいう「低気圧」を知らなくても、結果としての「雨が降る」というパターンは、確実につかんでいた。
これって、ものすごい知恵だと思いませんか? 毎日の小さな観察が、何百年もかけて、ひとつの言い伝えに結晶した。
わたしの観察記録
夕方、うろこ雲を見たわたし、家に帰ってから、家族に話しました。
わたし:「今日、うろこ雲見たんだけど」 長女(小4):「うろこ雲って何?」 わたし:「魚のうろこみたいな雲。秋の雲って言われてるけど、夏でも出るんだって」 長男(中2):「うろこ雲が出たら3日以内に雨、って聞いたことある」 わたし:「えっ、知ってるの?」 長男:「学校で習った」
中2の長男、こういう知識、けっこう持ってるんですよね。 わたしのほうが、知らなかった(笑)
そして、私たちは、3日間、観察してみることにしました。
1日目(うろこ雲を見た日)
夕方:うろこ雲。きれい。夜は晴れ、星も見えた。
2日目
朝:晴れ。 昼:ちょっと雲が増えた。 夕方:厚い雲が増えてきた。湿った空気。 夜:にわか雨。けっこう降った。 **「あれ?2日目で降った」**と、家族で驚き。
3日目
朝:曇り。 昼:本格的に雨。
つまり、うろこ雲を見てから、2〜3日で、わが家に雨が降りました。 言い伝え通り、確かに、的中。
「おお、当たったね」と、長男。 「昔の人、すごいね」と、長女。 夫は、「まあ、たまたまかもしれないけど」と、慎重派の意見。
それはそれで、いい意見。 1回当たったからといって、全部当たるとは限らない。 カラス記事で書いたみたいに、「当たったり、外れたり」しながら、観察を続けていくのがいいんだろう、と。
雲を見るって、楽しい
この一件をきっかけに、わたし、最近、空を見上げる時間が増えました。
買い物の帰り、ベランダで洗濯物を干すとき、夕方、子どもを迎えに行く道。 ちょっと立ち止まって、空を見上げる。 そして、
「これ、ひつじ雲っぽい」 「これは、すじ雲(巻雲)かな」 「これは、ただの普通の雲」
なんて、自分の中で雲の名前を当てる遊びを始めた。 小指を立てて、隠れるかどうかをチェック。
これ、子どもの遊びみたいなんですが、けっこう面白いんです。 お金もかからない。 ちょっと顔を上げるだけ。 それで、空が、急に「読めるもの」に変わる。
長女と一緒に、「今日のあの雲、なんて名前かな?」と話す時間も増えました。 スマホばっかり見ている時間より、こっちのほうが、ずっと豊かな気がします。
「天気予報」と「雲を見ること」、どっちが優れている?
ふと、こんなことも考えました。
今は、天気予報アプリで、明日も明後日も、1週間後も、天気が大体わかる時代。 わざわざ、空を見上げて、うろこ雲を探して、「3日後に雨かも」と予測する必要は、ありません。
でも、わたしは、両方やるのがいいと思いました。
天気予報アプリは、便利で正確。 雲を見ることは、楽しくて、自然と仲良くなれる。 役割が、違うんです。
天気予報を見て、傘を持って出かけるかどうかを決める。 そして、空を見上げて、「ああ、今日はうろこ雲ね、明日明後日には雨かしら」と、自分の目で確かめる。 両方やると、毎日が、ちょっと立体的になる気がします。
カラスのときと、ちょっと違う結論
前にカラス記事で「カラスがうるさいと雨」の言い伝えについて書きました。 あのときは、
「当たることもあるけど、外れることもある。科学的根拠は薄い」
という結論でした。
でも、うろこ雲は、もう少し信頼性が高いみたい。
「うろこ雲が出ると3日のうちに雨」=7割の確率で的中
これは、科学的にも理由があって、ちゃんとした観察に基づいた言い伝え。
つまり、昔から伝わる言い伝えには、信頼度のグラデーションがあるということ。 全部「迷信」と切り捨ててはいけないし、全部「正解」と思い込んでもいけない。 ひとつひとつ、自分で確かめて、信頼度を見極めていくのが、いちばんいい。
これ、なんだか、人生にも通じる話ですよね。 誰かが言っていることを、丸ごと信じるんじゃなくて、自分で観察して、自分で確かめる。 そうやって積み重ねた知識が、本当の意味で、自分の財産になる。
ミケとソラはどうしてたか
うろこ雲を見た日の夕方、わが家の猫たちは何をしていたか。
ミケ(雌、9歳)は、リビングの窓辺で、夕日の光を浴びて、お腹を出して伸びていました。 猫はうろこ雲なんて、たぶん見ていない。 でも、夕日の光に、確かに反応している。 窓辺がいちばん暖かい時間帯を、ちゃんと知っている。
ソラ(雄、1歳)は、ミケの隣で、寝そべってミケのしっぽをペチペチ叩いて遊んでいた。 ミケがちょっとイラっとして、ソラを軽く威嚇していた。 猫の世界は、空の名前なんて関係なく、今のこの瞬間で完結している。
それを見ていると、わたしも、ちょっと、**「今のこの空を楽しもう」**という気持ちになる。 3日後の雨を心配するのも大事だけど、目の前のうろこ雲を、純粋に「きれいだなあ」と眺めるのも、同じくらい大事。
さいごに
夕方の買い物の帰り道、ふと見上げた空に、うろこ雲。
それをきっかけに、わたしは、雲の名前と、昔から伝わる言い伝えと、気象のメカニズムを、ちょっとだけ知ることができました。 ついでに、3日後の雨も、ちゃんと予測することができた。 そして、家族で空を見上げる時間が、ちょっと増えた。
ニュースで気になった言葉を調べると、世界が広がる、と前に書きました。 空を見上げて気になった雲を調べると、空が広がる。 似ているけれど、ちょっと違う、いい時間でした。
スマホばっかり見ている方、ちょっと顔を上げて、空を見てみてください。 今、どんな雲が出ているか。 それは、何という名前か。 そして、その雲は、どんな天気の予兆なのか。
小指を立てて、雲の大きさを測るだけで、子どもの頃に戻ったみたいな気持ちになりますよ。
それでは、次に空を見上げるとき、その瞬間が、ちょっとだけ楽しくなりますように。
